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「桜雨」を読む。


 板東眞砂子さんは、日本経済新聞に子猫を何匹も殺したと書いて話題になった人である。

 

☆この小説は、戦前の池袋のモンパルナスといわれた画家村に住む画家と彼をめぐる二人の女子美術の学生だった女性の人生と、ふとした縁で一軸の絵に惹かれ、作家を探そうと求める編集者の30代の女性の物語。

 

 板東眞砂子さんは、奈良女子大で住居学科で学び、ミラノ工科でインテリアも学んだ女性でこの物語のなかで、日本画から洋画に転向し、パリに赴いた画家の西遊に、「日本人が洋画を描いても長い歴史のなかで培われた西洋人の洋画には叶わない。」と言わせている。

 

 それは、私が30のときにパリで感じた実感と同じである。

 

 今回の世界文化遺産で浮世絵のなかの美保の松原が外国人に指示されたと同じようにだ。

 

☆戦前の女子美術の学生のなかには、この小説のように、ある意味ふしだらで、親から勘当されて画家と同棲しながら絵を棄て生きただろう女性も、裕福な実家から東京に一軒家をたててもらい送金されて、画業に邁進しながらも、師の欲望の餌食になり、いつの間にか絵を描けず老いていった女性もいただろう。

 

 男でも女でも、名が出て誰からも分かる画風と顔が世間に知られるほどの成功者はそうはいないのだろう。

 

 桜雨のタイトルはそのまま、華やかに散る雨である。

 

 作者の私生活はしらないが、「わがままな生き方をしている人は、その罰金を払わないといけないんだと思う。」と、堅実のシンボルのような俳優から戦争で顔を火傷して俳優をやめ、家業の桶屋をやっている男性に言わせている。

 

☆女性画家がまだまだ生きぬかったころの、夢や欲望。誰でも老い、美しさも資産も永遠ではない。

 

 絵が残らなくても、名が後世に残らなくても、画家は自分のために描くのだからと言う。

 

 絵のタイトルが「嫉妬」「業火」と言うのも、絵を描く情念が理屈でないところから生まれるどうしようもない性から生まれるものであると、作家は語っている。

 

☆なんとなく、読後感がいいものではありませんでした。

 

 でも、多くの現実の画家の名が出てくるので、池袋モンパルナスの上野モンマルトルの丘も、純粋に懐かしく古きよき時代の青春を感じました。

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