June 6th, 2007

小さな中国のお針子



家にあったビデオを観た。驚いたことにこの前5月8日から1週間行ったばかりの中国の天門山の地が舞台だった。年内に三渓ダムが出来て揚子江の水の高さは70メートルも上がるらしい。この映画は2003年にできたようだが、ダムで舞台となった地が川底に沈んでいるところで終わっている。世界30カ国でベストセラーになったお話とのこと。
 フランス語の原題は
Balzac et La Petite tailleuse Chinoise
 バルザックと小さな中国のお針子

 知識階級の教育を受けた富める階級の2青年が毛沢東政権下で農村で学ぶため天門山まで来る。急な崖沿いの階段、貧しい段々畑、石炭の取れる鉱山。バイオリンを持ってきた青年とバルザックを読む医学生の青年は厳しい肉体労働に専念させられる。村の人は本も読めないし、バイオリンを聴くのも初めて。やがて祖父と住むお針子の娘と親しくなりバルザックを読み、字を教える。バイオリンを弾く青年との恋で娘は妊娠し医者にバイオリンを譲って中絶してもらう。山の美しさ、娘たちの水浴びの天女のような姿。文化が少しずつ山にも入りファッション雑誌のデザインで娘たちの洋服をお針子の祖父は仕立てる。ある日、娘は山を降りる。バスザックの影響で自立した娘は新しい地に向かうのだ。2青年はやがてフランスでコンサートを開くようなバイオリニストと国際的な医学博士になって対面する。二人は天門山に行って彼女の消息を尋ねたが誰も知らない。バイオリニストは自分たちの青春がダムの底に消えたと知る。

 私がたまたま乗った籠や昨年出来たばかりの世界1のロープウエイも無い完璧な自然界の美しさがとてもお洒落に撮られている。二人の青年の品格も美しいし、お針子の娘も強い。
本を禁じられた時代に隠し持っていた青年から盗んだバルザックだが、文学の力は娘に新しい人生を与えたようだ。

 前にも見たはずなのに、今日ほど深く胸に切り刻まれなかったのはやはりあの美しい山とあいた大きな穴(高さ120メートルくらいで横幅は60メートル弱)を見た後だからかもしれない。水牛が見えたロープウエイもあの映画のときはなかったのだ。なんという必要なフィルムだろう。世界遺産となった今、高級ホテルも建設中だがもうあの時のお針子さんはいなくなっているのだろう。

女帝

 3時まで仕事をして、20分ブート・キャンプをしてから出かける。
中国へのプチ小包を郵送し、目黒の有燐堂にオーダーしておいた友人の河原ノリエの新刊書を買う。

「ややこしい子」とともに生きる 特別支援教育を問う
岩波ブックレットNo.703 480円
 「恋するように子育てしよう」中央法規出版 1500円

 彼女とはすでに17年くらいの付き合いだが、非常な頑張りやさんなので驚いている。
彼女があちこちに書いている文章におおよその彼女のドラマが書いてあるので敢えて書かないが、極端から極端の生活を細い体でしている人だ。教育ママも半端ではない。私の家の子育てに比べ1本の道といおうかわかりやすい受験ママといえばいいのか目的まっしぐらで活きてきた人だ。未熟児の双子ちゃんが生まれて彼女は苦しみ成長し、同じ悩みに埋没しそうなママたちにエールを送っているようだ。私のように大甘人間はそんな人に何も言えない。せいぜい、あなたに何かあったらあなたの双子は私が引き取るからねって言ったけれど、やはり有能なノリエママの代わりは出来ない。

 それから、空の大きめのカートを引っ張ってJRで有楽町へ行き、有楽座でチャン・ツッイーの映画「女帝」を観る。
やはり、観て良かった。ストーリより視覚的に国際感覚と現代感覚が洗練されていて綺麗だ。とくに髪の形が楽しかったのと、ダニエル・ウーのイケメンぶりに驚いた。観たことのある俳優が多いと思ったら、つい最近見たばかりの「小さな中国のお針子」の主演女優のジョウ・シュン、「活きる」の主演男優のゴォ・ヨオが出ていた。国際的に評価されてる俳優とスタッフでできている。
 ストーリは「ハムレット」から。唐王朝が滅びた後の五代十国時代。権力と愛と復讐との宮廷ドラマと詩人の心で舞踊や舞台にあけくれる皇太子の仮面を被った存在が暴く人間の愚かさ。
 チャン・ツッイーの細い体を見ると、美しい人は存在するだけで罪深いのだと思えた。嫉妬や欲望、執着。人間の欲望を赤に例え、愛する女帝。真実の愛を求めた人も消え、忠実な召使も、裏切り者も消え、喧騒もやがて無になる寂しさ。後味のいい映画ではなかったが、あの美しい映像をまた観たいなと思った。

 それから、JRで新橋に行き「ユリカモメ」でお台場まで。東京は美しいと思った。どのビルも高く聳え、観覧車やレインボウ・ブリッジもライト・アップが綺麗だ。私はグランド・パシフィックホテルの「シミバレー」出、自分の絵の総入れ換えをすべくもって行ったカートに移した。ガラスのちいさな豚の親子を買った。

 品川のパシフィック・ホテルまでフリーバスが出ているので、待ち時間で食事をすることになった。「楼蘭」で冷やし中華とライチ・シャーベット。お土産にちいさな肉まんを2種買った。家に帰ると主人が嬉しそうに「人のお金で遊んできて!」と言ったので「バカね。男の甲斐性じゃない。女子供に好きなことをさせてやってるという誇りがいいじゃない。」と言ったら、「引っかからないぞ!」と言った。

 とにかくチャン・ツッイーのスリムな体を見てから自分の見苦しさを痛感したので、もう1度ブート・キャンプをしてから、今日は寝ましょ!