携帯の調子が悪い!
木嶋佳苗が獄中で書いたと言う実話。
正直に書かれていると思う。
世の中には悪い人が多いものだ。
若い高校生の彼女を騙した詐欺師や母親の交通事故による脚の切断。
恐ろしくおませな社会との関わり方。
偶然か?祖父の馬の受精やヤマギシ会での牛の受精見学が性への好奇心を育てる。
そして、広い世間ではお嬢様に属する育ち。
面白く。人間の運命の怖さを感じる。
どんどんすれて行くのだ。
文章もうまい。
女の子を持つ母親や父親は読んだ方が良い。
しかし、この本は犯罪とされた事件までで終わっている。
⭐︎贅沢と性の自信に裏打ちされて日本経済界の上層の人たちへの売春が10代から始ま り、複数のエリートと言ってもいい人たちと交遊し、衣服、食べ物に贅沢を極める生活が 30代まで続く。
父親は教育を怠ったようには見えないが、母親の俗物性と当人が合わず家庭生活は軋み、兄 弟達も其々箍の緩んだ生活をしている。
しかし、ピアノの講師を務めるいい家庭のお嬢様だと言うイメージと,本人の先天的な頭 の良さと世の中を舐めた生き方が事件に繋がるのだろう。
⭐︎もし,詐欺と人殺しが無かったら,魅力的な生き方として人を惹きつけ、文化人にも 成功したセレブの奥様にもなれるようなものを持っているのだ。
しかし、父親が死ぬ。7年も自宅に入ることを許されなかった母親は離婚におおじなかっ たが、父親は初恋の未亡人と愛を育てていて、おまけにその彼女は有能な弁護士なのだ。
大金持ちと普通の経済能力の人が出てきて、彼女は全て受け入れ、上手に天性の泳ぎ方で 自分が殺されることはない。
人さえ殺さなければ聖母のように優しいと見えてしまう人への理解や包容力の大きさがあ る。
しかし、余りにも贅沢に慣れた彼女にとって何人かのお金を引き出す為の道具のような男 達は、みみっっちいお金に執着した殺されても仕方ないと思えた人たちなのだろう。
やはり、狂っているのだ。
⭐︎警察は彼女の過去の収入となった売春相手に会って、聞き込みをしている。
膨大な数だ。
中には、ただ借金を返しただけの振り込みもあって、警察も驚く。
一月に100万円くらいの収入があって、お嬢様のお稽古も書道、香道、着付け、美術の 勉強などもしていて、この本を読むと、事件がなければ上智大学が滑り止めと言う学力が あって、本人が高卒で働くことを選び、3年後試験勉強せずに東海大学に入ったのを両親 がもっといい大学へと諌めているのを読むと、本人は極めて自由な思考を持っていたと思 われる。
しかし、天性の詐欺師であるから,読み手に彼女はむしろ被害者で良い家庭のお嬢様であ ると同情に持って行っているのかもしれない。
⭐︎通俗的に十代の彼女の持て方と30代半ばの市場が変わったのだけかもしれない。
⭐︎ごく幼い日に北海道の名門での彼女が,東京から来た家族の持っている教養や着てい るものに,別世界と感じるところがある。
7歳の女の子が,自分たちには届かぬ世界が東京にあると知ってしまう。
そして,得ようと思った。
⭐︎自分は50歳の頃,個人資産,全米一の大富豪と知り合ってパーティや自宅に呼ばれ,桁 違いの世界があることを知った。
もしそれが,20歳の時だったら,人生が狂ったかもしれない。
しかし、私は中程度の自分の暮らしが一番いいと分別のある年齢だったので、単なる別世 界ですんだ。
犯罪に同情はしてはいけないが、田舎の向上心に溢れた少女は上には上の世界があること を知り、最後にはお金さえ有ればと狂っていった。
しかし、彼女の関わった人達にはお金はあっても偽者が多く、それが、田舎で育った限界 のような哀しさもある。
彼女が北海道で受験勉強の講習を受けに行く時も、父親はビジネスホテルではダメだと1 日2万円もするホテルに何週間も滞在させている。
そういうハイクラス信仰が破綻して行くのは父親も母親も一緒で、実力がないと言ってし まえばそれまでだが、堅実な暮らしと言うのが無いのが残念だ。
夢には危機が伴う。
育てた祖母もいる。女の子の体の大切さを教え、体に顔に塗るクリームを塗るほど女性は ケアが大事だと高校生の彼女に教えた。母親から離れ、高校は父親の母の家から通うのだ。
被害者の地味な人生。
その家族の苦しみ。
やはり、壊れた人の壊れに参加した多くの大人が悪いと思われる。